月の沙漠

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この曲を最初に演奏することにしたのは病院で長期療養中の患者さんからのリクエストからだった。
その人はとても恥ずかしがりだったようでなかなか会場にはいらっしゃらないけれど、そっと壁の影に隠れて聴いていてくれたりする。

そして「月の沙漠」は他の患者さんにも好評で私達は演奏するたびに改めてこの日本の歌の素晴らしさを感じることになるのです。

昔懐かしい歌には、その人それぞれに想うものがあり聴いてくださる方たちの遠くを見るような表情が心に残ります。

この最初の付点音符は昔はハイカラだったのよ。
なんて言われてみれば、なんてことはない付点だけど胸がドキドキするような気がします。
演奏の終盤戦「いよぉっ！大統領！」なんて掛け声が入れば思わず笑い出しそうになってしまうけど真剣な眼差しに心から感謝します。


演奏を始めたばかりの３年前、この曲を聴いて「うまい！」と言ってくれた叔父さんが、その３日後に亡くなりました。

もうすぐその叔父さんの命日です。